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劇場版銀魂×暗殺教室ネタです。
暗殺教室設定なので、読んでらっしゃらないと分からない部分が多いかと思われます(>_<)

殺せんせー=銀八
烏間先生=土方(デコ方)

劇場版×暗殺教室設定という事から大体予想がつくかもしれませんが、アンハッピーな雰囲気です。
でも逆転ハピエンの可能性もある、と、私は思ってます……!

よろしければ↓






 いっち、にー、さーん、しっ!
 ごー、ろっく、しっち、はっち!
「おー、やってんなァ」
 午後の校庭に響く生徒たちの掛け声を耳にしながら、銀八は一人、教室で紫煙をくゆらせていた。
 ここ3年Z組では銀八がほぼ全教科を教えているが、体育だけは別の教師の受け持ちだ。
 防衛省臨時特務部より派遣されている彼は、少々固すぎるきらいはあるものの教師として優れた資質を持っている。一般的な体育の授業とはかなり赴きの異なる『訓練』を受けながらも、生徒たちの顔が活き活きと輝いているのが何よりの証拠だ。
 Z組の生徒たちが『暗殺』の訓練を受け始めて、そろそろ四ヵ月。
 目を見張るほどの速度で彼らは成長している。
「若さってやつかねぇ」
 男子三日会わざれば、の慣用句を体現するが如くめきめきと心技体を伸ばしていく生徒たちを思い浮かべて微笑する。
 これならば……きっと。
 きっと、卒業までに彼らは、自分を殺してくれるだろう。

 銀八は白衣のポケットから携帯灰皿を取り出して煙草を捻じ込むと、徐に左手首のボタンを外して白衣とシャツの袖を捲り上げた。
 肘の上まで露わにすれば――腕に浮かぶ、痣のような筆文字が目に入る。
「あー……もうここまでキてんのか」
 肘と手首の丁度中間辺りまで這い下りている呪詛を見て、銀八は静かに口の端を歪めた。最近、進行が早い。
 ちっと油断してたのかね、と頭を掻きながら、右手でネクタイを緩めてボタンを上から二つほど外す。胸元を覗き込めば、腕と同じ呪詛が鎖骨付近まで這い上っているのが見えた。首まで上がってくるのも時間の問題だろう。
 さて、顔にまで出ちまったら、生徒どもをどう誤魔化すか。
 厄介だなと頭を捻りながらボタンを二つ嵌め直す。自分の性格からして、第一ボタンまで常にキッチリ閉めておくというのは無理だ。生徒たちの目にこの禍々しい筆文字が触れる日もそう遠くない。
「……ま、テキトーに言っとくか」
 オシャレなペイントアートだとでも言っておけば、いい歳して中二病かよと笑われるぐらいで済むだろう。
 この呪詛の本当の意味など、こちらが言わぬ限り、生徒たちは察しようがないのだから。

 銀八の身体は、蠱毒、という名のナノマシンウィルスに巣食われている。
 肌に這う呪詛は、蠱毒の支配の進行の証。
 意志の力で無理やり抑え込んではいるけれど、じわりじわり、銀八の身体は己のものでは無くなっている。
 タイムリミットは三月。
 どれほど気を張ろうと自我を保てるのはそこが限界だと、銀八は至極冷静に見極めていた。
 この身体が完全に支配されてしまった時、蠱毒は人類には対抗不可能なウィルスを地球上に撒き散らす。銀八の身体からバラ撒かれるウィルスが伝播し、地球を覆い尽くし……人間を、滅ぼす。
 ――だから、その前に。
「誰が殺してくれるかねぇ」
 銀八は左腕の袖を直して、浅く腰掛けていた机から気だるげに立ち上がった。窓に歩み寄って校庭に目を遣れば、ナイフを振るう生徒たちの姿が見える。誰もかれも四ヵ月前より格段に上達しているのが遠目ですら認められた。
 さて、自分を殺してくれるのは、知略と悪戯心に富む沖田君だろうか。
 それとも、女子の中では随一の運動能力を誇る神楽だろうか。
 いやいや、意外なところで新八かもしれない。アイツは地味だがやる時はやる男だと俺は知っている。
 ガラリと窓を開けて両腕を木枠にかけて凭れ、校庭を眺めてうっそりと笑う。
 銀八が銃弾やナイフの切先を避けてしまうのは、彼自身の意志ではない。蠱毒の防衛機能だ。
 蠱毒に浸食されながらも未だ自我を保っている銀八は、普段はまだ己の自由に身体を動かしている。ただし宿主の生命に危険が迫った時だけは、蠱毒は身体を乗っ取って危機回避行動を取っていた。
 ゆえに、自ら死のうとしても、死ねない。
 誰かに蠱毒の防衛機能を上回る攻撃によって殺してもらうしか道はないのだ。
 だから銀八は育てているのだ。この自分を殺す暗殺者を。人類を救う勇士を、この手で。
 ……三月までに、必ず。殺してもらわなければならない。

「……頼んだぜ、土方先生」
 窓枠で頬杖をついて、校庭で生徒を指導する男へポツリと語りかける。
 防衛省から派遣されている彼が、どの程度の情報を与えられているかを銀八は知らない。
 だが、頭の良い男だ。上から詳細を聞かされていなくとも、限りなく正解に近い推測を自ら巡らせているに違いない。
 銀八は彼に、同僚として全幅の信頼を置いている。
 軍人としても教師としても優れた資質を持つ土方ならば、きっと三月までに、Z組の生徒へ銀八を殺せる技術を仕込んでくれるだろう。
 ……そしてもし、それが無理なら。
 じっと見詰めていると、この距離ですら気配を感じたのか土方が振り返った。切れ長の双眸と目が合う。
 無言でへらりと笑って手を振れば、男は拳銃を取り出して躊躇う事なく発砲した。
 銀八の中の蠱毒が反応して首が勝手に傾き、頭の横を銃弾が過ぎる。何と恐ろしい……いや、頼もしい射撃精度だろう。
「頼んだぜ……土方」
 銀八が再び囁けば、聞こえたわけでもないだろうに、土方は一瞬僅かに眉根を寄せた。

 銀八は、あの厳しくお固い軍人兼体育教師を、心から信頼している。
 もし、もしも三月までにZ組の生徒を暗殺者として育てきれなかったとしたら。
 彼が責任を持って自分を殺してくれるであろう事を、信じている。

「ごめんな土方…………頼む、な」

 冷徹な表情の下に押し込められた葛藤と懊悩を知りながら、それでもお前に頼む事を。
 許さなくていいから、どうか俺を憎んで、そして殺してくれ。

 銀八は瞼を下ろしてそっと祈ると、ゆっくりと窓に背を向けた。


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魘魅銀八とデコ方先生。
個人的願望としては、3Z生徒たちとデコ方先生の活躍によって逆転ハピエンになってほしい……!

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